第94話 おさらい
「もぉ〜、何でこんな事になっちゃうのかなぁ?」
お馴染みの校庭脇のベンチにつばめ、蘭、そして変態を解いた野々村の順に3人で並んで座る。
つばめは未だ野々村に対して疑心が晴れないらしく、面倒を押し付けられた事に対して憤っていた。
そのつばめの面倒事に巻き込まれた蘭も内心面白く思ってはいないのだが、「友達だよね」と頼られた上に野々村をつばめの元に導いた責任を感じて、困り笑顔を見せながら付き合っていた。
野々村も徐々に興奮が治まってきたのか、いつもの冷静さを取り戻しつつあった。
ちなみに今日はサッカー部が校庭で紅白戦形式で練習をしているようで、高校生らしい溌剌としたプレイを見せていた。
沖田はベンチ要員らしく、今は脇で「右だ」「左だ」「ファイトだ」と大きな声を出して仲間の応援をしていた。
そんな沖田をうっとりと見つめるつばめ。
そんなつばめを見て密かに苦笑し、自分の心に整理を付ける野々村。
そんな野々村を見て、自分の内心の動揺に驚く蘭。
『今ここで「あの男の子が例のサッカーくんだよ」って言ったら、つばめちゃんどんな顔するだろう? 怒るかな? 悲しむかな? それとも…?』
野々村はつばめの前で「沖田を諦める」と宣言した。そう決断するまでにどれだけの葛藤があっただろう? 血を吐くような苦しみの果てに出した答えであっただろう。
『私のこの気持ちが恋なのかどうかは分からない。でも野々村さんの様に「沖田君を諦める」って言おうとしたら… いやそう考えるだけで胸が締め付けられる様に痛くなる… つばめちゃんはとっても良い子。大事な友達。大好き… 彼女の恋を応援してあげたい。でも… でもなんでこんなに心が苦しいんだろう…?』
胸が痛い。頭が痛い。考えても詮無い事と悟った蘭は、一旦沖田の事を頭から外す事にした。このまま考え続けていたら、いつかつばめに対して嫌な態度を取ってしまいそうに思えたからだ。
「と… とりあえず野々村さんにマジボラの活動の事とかを教えてあげた方が良いんじゃないかな…?」
沖田がフィールドに出る様な事になれば、つばめの視線と思考は沖田に釘付けになって、普通の会話すら覚束なくなるだろう。蘭とて沖田がプレイするのならばそれを優先的に見たいと思っている。
ならば沖田がベンチに控えているうちに通常業務は終わらせてしまいたい、という蘭の思惑であった。
蘭の言葉を受けてつばめも『そうだった!』と我に帰る。このまま野々村を放置していたら、また睦美に折檻されるかも知れないのだから。
「う〜ん、何から話せば良いのかな…? わたし自身も1から10まで事情を聞いている訳でも無いんだよねぇ…」
「まず同好会の活動内容と規模、並びにその目的が知りたいです」
頭を抱えるつばめに対して野々村が冷静に希望を述べる。
一瞬「オイ! 貴様の発言は許可してないぞ、このゴミ虫野郎!!」と、どこかの軍曹キャラの様な言葉を口にしようとしたつばめであったが、睦美に「面倒を見ろ」と任された事、そしてこれからは野々村も魔法少女仲間である、という事を鑑みて、『普通に接してあげよう』と方針を転換させる。
「えっとね… まず目的なんだけど、街の人達を助けて『感謝のエナジー』っていうのを集める事らしいんだ」
『感謝のエナジー』という単語に蘭は反応する。シン悪川興業で集めている『恐怖のエナジー』と似た語感の言葉。恐らくはお互いに対を成す言葉……。
「それで何をするのかって言うと… う〜ん、言っちゃって良いのかな…? でも口止めもされてないし、2人とももう仲間だから良いのかな…? あのね…」
つばめの口から語られるアンコクミナゴロシ王国の滅亡、そしてムッチー・マジ・アンコクミナゴロシ王女の勇姿と悲願……。
『うげぇっ、初めて聞いたけど近藤先輩ってお姫様だったの?! むしろどこかのお店の女王様かと思ってたわ…』
『滅亡した魔法王国! その復活を目指して戦う魔法のプリンセス! なんて燃えるシチュエーションなの?!』
蘭と野々村、2人は思い思いの感想を抱く。ちなみに蘭の頭からは自身がウマナミレイ?を演じていた記憶はすっぽり抜け落ちていた。
「それから『恐怖のエナジー』を集めているらしいシン悪川興業っていう悪の組織ね。こいつらが何を考えているのかまるで分からないんだ」
蘭はここでは発言を差し控える。繁蔵が何を考えているのか分からないのは蘭も同感だ。
「王国の事は、わたしも全部聞いた話だからどこまで本当か知らないよ…? でも近藤先輩と久子先輩だけは呪文の体系が違うから信じるしか無い、みたいな…」
荒唐無稽な話ではあるが、現に魔法と言う物をリアルに体験してしまっている蘭と野々村は、つばめの話を『戯言』と切り捨てる事は出来なかった。
「規模はさっき部室にいた5人プラスわたしの友達の綿子と有名人の御影くん。もっともこの2人は忙しいから、たまにヘルプで頼むくらい。あとは顧問のアンドレ先生と、それから保健の山崎先生もマジボラのOGで色々相談に乗ってくれるんだよ… そうだ、せっかくだから後で保健室にも顔を出して挨拶しておこう。蘭ちゃんも挨拶まだなんじゃない?」
「う、うん。そうね…」
不二子の名前が出た所で、つばめは謎の新呪文や謎の真つばめブーメランについて不二子に相談してみようと思い立っていた。
結局練習試合の最後まで出番の無かった沖田に見切りを付けて保健室へと足を向ける3人。
そしてつばめ達3人を物陰から窺う1人の人物が居た事に気付いた者は居なかった。
お馴染みの校庭脇のベンチにつばめ、蘭、そして変態を解いた野々村の順に3人で並んで座る。
つばめは未だ野々村に対して疑心が晴れないらしく、面倒を押し付けられた事に対して憤っていた。
そのつばめの面倒事に巻き込まれた蘭も内心面白く思ってはいないのだが、「友達だよね」と頼られた上に野々村をつばめの元に導いた責任を感じて、困り笑顔を見せながら付き合っていた。
野々村も徐々に興奮が治まってきたのか、いつもの冷静さを取り戻しつつあった。
ちなみに今日はサッカー部が校庭で紅白戦形式で練習をしているようで、高校生らしい溌剌としたプレイを見せていた。
沖田はベンチ要員らしく、今は脇で「右だ」「左だ」「ファイトだ」と大きな声を出して仲間の応援をしていた。
そんな沖田をうっとりと見つめるつばめ。
そんなつばめを見て密かに苦笑し、自分の心に整理を付ける野々村。
そんな野々村を見て、自分の内心の動揺に驚く蘭。
『今ここで「あの男の子が例のサッカーくんだよ」って言ったら、つばめちゃんどんな顔するだろう? 怒るかな? 悲しむかな? それとも…?』
野々村はつばめの前で「沖田を諦める」と宣言した。そう決断するまでにどれだけの葛藤があっただろう? 血を吐くような苦しみの果てに出した答えであっただろう。
『私のこの気持ちが恋なのかどうかは分からない。でも野々村さんの様に「沖田君を諦める」って言おうとしたら… いやそう考えるだけで胸が締め付けられる様に痛くなる… つばめちゃんはとっても良い子。大事な友達。大好き… 彼女の恋を応援してあげたい。でも… でもなんでこんなに心が苦しいんだろう…?』
胸が痛い。頭が痛い。考えても詮無い事と悟った蘭は、一旦沖田の事を頭から外す事にした。このまま考え続けていたら、いつかつばめに対して嫌な態度を取ってしまいそうに思えたからだ。
「と… とりあえず野々村さんにマジボラの活動の事とかを教えてあげた方が良いんじゃないかな…?」
沖田がフィールドに出る様な事になれば、つばめの視線と思考は沖田に釘付けになって、普通の会話すら覚束なくなるだろう。蘭とて沖田がプレイするのならばそれを優先的に見たいと思っている。
ならば沖田がベンチに控えているうちに通常業務は終わらせてしまいたい、という蘭の思惑であった。
蘭の言葉を受けてつばめも『そうだった!』と我に帰る。このまま野々村を放置していたら、また睦美に折檻されるかも知れないのだから。
「う〜ん、何から話せば良いのかな…? わたし自身も1から10まで事情を聞いている訳でも無いんだよねぇ…」
「まず同好会の活動内容と規模、並びにその目的が知りたいです」
頭を抱えるつばめに対して野々村が冷静に希望を述べる。
一瞬「オイ! 貴様の発言は許可してないぞ、このゴミ虫野郎!!」と、どこかの軍曹キャラの様な言葉を口にしようとしたつばめであったが、睦美に「面倒を見ろ」と任された事、そしてこれからは野々村も魔法少女仲間である、という事を鑑みて、『普通に接してあげよう』と方針を転換させる。
「えっとね… まず目的なんだけど、街の人達を助けて『感謝のエナジー』っていうのを集める事らしいんだ」
『感謝のエナジー』という単語に蘭は反応する。シン悪川興業で集めている『恐怖のエナジー』と似た語感の言葉。恐らくはお互いに対を成す言葉……。
「それで何をするのかって言うと… う〜ん、言っちゃって良いのかな…? でも口止めもされてないし、2人とももう仲間だから良いのかな…? あのね…」
つばめの口から語られるアンコクミナゴロシ王国の滅亡、そしてムッチー・マジ・アンコクミナゴロシ王女の勇姿と悲願……。
『うげぇっ、初めて聞いたけど近藤先輩ってお姫様だったの?! むしろどこかのお店の女王様かと思ってたわ…』
『滅亡した魔法王国! その復活を目指して戦う魔法のプリンセス! なんて燃えるシチュエーションなの?!』
蘭と野々村、2人は思い思いの感想を抱く。ちなみに蘭の頭からは自身がウマナミレイ?を演じていた記憶はすっぽり抜け落ちていた。
「それから『恐怖のエナジー』を集めているらしいシン悪川興業っていう悪の組織ね。こいつらが何を考えているのかまるで分からないんだ」
蘭はここでは発言を差し控える。繁蔵が何を考えているのか分からないのは蘭も同感だ。
「王国の事は、わたしも全部聞いた話だからどこまで本当か知らないよ…? でも近藤先輩と久子先輩だけは呪文の体系が違うから信じるしか無い、みたいな…」
荒唐無稽な話ではあるが、現に魔法と言う物をリアルに体験してしまっている蘭と野々村は、つばめの話を『戯言』と切り捨てる事は出来なかった。
「規模はさっき部室にいた5人プラスわたしの友達の綿子と有名人の御影くん。もっともこの2人は忙しいから、たまにヘルプで頼むくらい。あとは顧問のアンドレ先生と、それから保健の山崎先生もマジボラのOGで色々相談に乗ってくれるんだよ… そうだ、せっかくだから後で保健室にも顔を出して挨拶しておこう。蘭ちゃんも挨拶まだなんじゃない?」
「う、うん。そうね…」
不二子の名前が出た所で、つばめは謎の新呪文や謎の真つばめブーメランについて不二子に相談してみようと思い立っていた。
結局練習試合の最後まで出番の無かった沖田に見切りを付けて保健室へと足を向ける3人。
そしてつばめ達3人を物陰から窺う1人の人物が居た事に気付いた者は居なかった。